過労死等の公表データを就活・転職時に役立てる 〜 業界・職の見方 〜

こんにちは、Gene-K(@SmileWork_LAB)です。

厚生労働省の労働基準局は毎年「過労死等の労災補償状況」というデータを公表しています。

労災補償(労働者災害補償保険)

労働者災害補償保険法に基づき、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して又はその遺族に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う日本の公的保険制度です。

その費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。働くみなさんの給与から労災保険料は控除されていません。(雇用保険料とは別ものです)

労災補償の支給が決定したということは、労働者の病気やケガ等の原因が業務によるものだと認められたということです。

この場合の労働者とは、正社員、非正規社員、パート・アルバイトなど雇用の形態や名称を問わず、労働の代償として賃金を受ける人のすべてを指します。

厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」は、業務が原因で傷病等になった労働者の実態を業種・職種等の区分で具体的な数値で公表したものです。

当然、その業種・職種のすべての会社の働き方に問題があるわけではありません。

ただ、就活・転職の際、希望する先の働き方がどうなのか、データ(数値)でその傾向を大きなくくりでも確認しておくことは大事なことです。

以下、令和3年6月23日に厚生労働省・労働基準局が公表した「令和2年度 過労死等の労災補償状況」の要旨を引用抜粋しコメントします。

精神障害に関する事案の労災補償状況

うつ病など精神障害になったその原因は業務によると労働者から労災請求があった件数は2,051件(前年度比9件の減)で、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比47件減の155件。

労働者からの請求の内、労働基準監督署が業務によるものだと労災補償の支給を決定した件数は608件(前年度比99件の増)で、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比7件減の81件。

2,051件の請求のうち決定がわずか608件と、精神障害が業務によるものだと立証し労災認定されることの難しさが分かります。

業種別

「業種別(大分類)」の請求件数を多い順で並べると以下のとおりです。(カッコ内の数字は請求件数のうち支給決定件数)

「医療,福祉」488件(148件)
「製造業」326件(100件)
「卸売業,小売業」282件(63件)
「運輸業,郵便業」202件(63件)
「情報通信業」111件(27件)
「宿泊業,飲食サービス業」92件(39件)
「建設業」89件(43件)
「教育,学習支援業」77件(11件)
「金融業,保険業」64件(12件)
「農林,漁業等」8件(8件)
「その他の事業」312件(94件)

支給決定件数は「医療,福祉」148件、「製造業」100件、「運輸業,郵便業」と「卸売業,小売業」63件の順に多いです。

職種別

「職種別(大分類)」の請求件数を多い順で並べると以下のとおりです。(カッコ内の数字は請求件数のうち支給決定件数)

「専門的・技術的職業従事者」523件(173件)
「事務従事者」444件(83件)
「サービス職業従事者」284件(91件)
「販売従事者」241件(65件)
「生産工程従事者」215件(58件)
「輸送・機械運転従事者」122件(43件)
「運搬・清掃・包装等従事者」93件(30件)
「管理的職業従事者」56件(29件)
「建設・採掘従事者」43件(24件)
「その他の職種」30件(12件)

支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」173件、「サービス職業従事者」91件、「事務従事者」83件の順に多いです。

年齢別

「年齢別」の請求件数を多い順で並べると以下のとおりです。(カッコ内の数字は請求件数のうち支給決定件数)

「40~49歳」597件(174件)
「30~39歳」490件(169件)
「20~29歳」448件(132件)

精神障害の発症は、年齢に関係ありませんね。

出来事別の支給決定件数

「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」99
②「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」83件
「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」71

「出来事」とは精神障害の発病に関与したと考えられる事象の心理的負荷の強度を評価するために、認定基準において、一定の事象を類型化したもの。

ここが一番の問題です。

①・③の多さから「パワハラ防止法」が制定され、企業にその確実な取り組みが義務化されたのも当然のことですね。

脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

業務が原因で脳梗塞・心筋梗塞などを発症したものです。

請求件数は784件で、前年度比152件の減。

支給決定件数は194件で前年度比22件の減となり、うち死亡件数は前年度比19件減の67件。

業種別(大分類)の請求件数
「運輸業,郵便業」158件
「卸売業,小売業」111件
「建設業」108件の順で多く

支給決定件数
「運輸業,郵便業」58件
「卸売業,小売業」38件
「建設業」27件の順に多いです。

職種別(大分類)の請求件数
「輸送・機械運転従事者」148件
「専門的・技術的職業従事者」112件
「サービス職業従事者」80件の順で多く

支給決定件数
「輸送・機械運転従事者」60件
「専門的・技術的職業従事者」27件
「販売従事者」と「サービス職業従事者」23件の順に多いです。

年齢別の請求件数
「50~59歳」264件
「60歳以上」261件
「40~49歳」204件の順で多く

支給決定件数
「50~59歳」65件
「40~49歳」64件
「60歳以上」44件の順に多いです。

精神障害がすべての年齢で発症していた点と異なり、高年齢層の過重労働と健康障害のリスクが明確です。

時間外労働時間別(1か月または2~6か月における1か月平均)支給決定件数

「評価期間1か月」では「100時間以上~120時間未満」27件が最も多く、また、「評価期間2~6か月における1か月平均」では「80時間以上~100時間未満」75件が最も多いです。

80時間を超える長時間労働は、身体・精神のどちらにも重大なリスクであることが明確です。

ただ、世界的に問題である長時間労働について、世界保健機関(WHO)・国際労働機関(ILO)は、月60時間以上の残業をしていると「深刻な健康被害をもたらす」との内容の報告書を発表しています。

以上、公表データ(数値)だけではその会社の個別の実態までは解明できませんが、データから垣間見える傾向をもとに、会社説明会や人事の話を多角的に検証してみると「なるほど」と納得できるところ、「なんか怪しい」と不審に感じるところが見えたりします。

人間の持っている本能(危険回避)で感覚的に見極めることも必要ですが、データ(数値)と照らし合わせて客観的に見極める。

その両面の使い分けが大事です。

ご参考まで。

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