裁量労働制の改正内容(2023.2.14 省令案)が公表されました ~ 政府が推進する働き方改革予想図 ~

こんにちは、Gene-K(@SmileWork_LAB)です。

これまで議論されてきました「裁量労働制」のあり方について、2023年2月14日に開催の「第188回労働政策審議会労働条件分科会」にて、その方向性が定めれ、労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案として公表されました。

大筋は前回記載しました記事の内容のとおりですが、専門業務型裁量労働制で議題に挙がっていた「対象業務の範囲」については触れられていませんね。

専門業務型裁量労働制改正(対象業務の拡大・本人の同意取得の義務化)の方向性とポイントを解説します

労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案(概要)

改正の概要

労働基準法施行規則(昭和 22 年厚生省令第 23 号)に以下の内容を追加することとする。

裁量労働制について

対象労働者の要件

◎ 企画業務型裁量労働制(以下「企画型」という。)について、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更する場合に、使用者が労使委員会に変更内容について説明を行うことを決議事項に追加することとする。

裁量労働制に対象労働者の要件について、改定されるのは「企画業務型裁量労働制」のみで、「専門業務裁量労働制」には具体的には何も言及されていません。

本人同意・同意の撤回

専門業務型裁量労働制(以下「専門型」という。)について、本人同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないことを協定事項に追加することとする。
専門型及び企画型について、同意の撤回の手続を協定事項及び決議事項に追加することとする。

これで、専門業務型裁量労働制も企画型裁量労働制と同じ、制度適用には本人の同意が義務化されます。また、同意の撤回についても、その手続き方法を協定書に定めることになります。

これが一番大きく重要な改正で、みなし時間と業務量・納期・責任の程度等を考え、割に合わないと考えれば、労働者側が裁量労働制の適用を解除し、労働法制の原則である労働時間制(労働時間に応じた割増賃金の支給となる働き方)に変更できるようになります。

これまで、残業時間の削減を目的に専門業務型裁量労働制を導入していた企業にとっては特に、今回の改正は経営上とても厳しい内容になります。制度の趣旨に反し、不当な理由で制度を導入している企業が考えるのは、同意せざるを得ない状況に労働者を追い込むこと。長時間労働の低賃金で労働者を使い捨てにする典型的なブラック企業をこの制度から排除するために「同意をしなかった場合に不利益取扱いをしない」こと、「同意の撤回の手続を協定に追加する」ということは、労働基準法・第2条(労働条件の決定)に定める「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」に照らし合わせても当たり前のこと。むしろ問題を把握しながら、これまで何の改正もしてこなかったのが不思議なぐらい(企業寄りの対応)。

労使委員会の実効性向上

◎ 企画型について、使用者が労使委員会に対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容について説明することに関する事項を労使委員会の運営規程に追加することとする。
◎ 企画型について、労使委員会が制度の実施状況の把握及び運用の改善等を行うことに関する事項を労使委員会の運営規程に追加することとする。
◎ 労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とすることを労使委員会の運営規程に定めることとするとともに、労使委員会の労働者代表委員の選出手続の適正化を図ることとする。
◎ 労使委員会の労働者代表委員が労使委員会の決議等に関する事務を円滑に遂行することができるよう、使用者は必要な配慮を行わなければならないものとする。(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則(平成4年労働省令第 26 号)における労働時間等設定改善委員会においても同様の改正を行うこととする。)

「適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容について説明することに関する事項」については、企画型裁量労働制だけでなく、専門業務型裁量労働制にも当てはまることで、今回は、そこまでの改正が見られないことが残念ですね。

行政の関与・記録の保存等

◎6か月以内ごとに行うこととされている企画型の定期報告の頻度を初回は6か月以内に1回及びその後1年以内ごとに1回とすることとする。
◎ 専門型・企画型ともに、健康・福祉確保措置の実施状況等に関する労働者ごとの記録を作成し、保存することとする。
◎ その他所要の改正を行う

「その他所要な改正を行う」とありますので、専門業務型裁量労働制における問題点をひとつでも多くなくす内容になることを期待しています。

施行期日

施行期日:令和6年4月1日(予定)

専門業務型裁量労働制を導入し、これまで「本人の同意」なく制度適用していた企業と労働者にとっては、「働き方」の考え方を大きく見直す必要が出てくるはずですので、この令和6年4月1日の改正施行は、かなりタイトなスケジュールになるかと思います。

ポイント

長時間労働や賃金・待遇面での様々な問題点を把握しながら、それでも裁量労働制(実労働時間ではなく、みなし時間で働く例外的な働き方)を継続することが前提になっているのは、これがこれからの働き方の基本(労働の時間ではなく、労働の成果)と考えていると容易に想像できます。

政府が推進する働き方改革予想図を頭に入れながらキャリア形成をしていくことが必要です。

VUCAといわれる今の時代は特に。

もちろん、生活の質(生きがい・働きがい)にも大きく影響してきますので。

以上、2023年2月14日付・第188回労働政策審議会労働条件分科会(資料)からの引用です。最新の法改正情報は、厚生労働省の情報でご確認ください。

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