会社の見方:エンゲージメントが及ぼす影響と向上のヒント ~ 相互理解と信頼関係の構築が鍵 ~

こんにちは、Gene-K(@SmileWork_LAB)です。

現在の企業経営において、従業員の「エンゲージメント」が重要と言われています。そして、多くの企業が従業員エンゲージメントに関する調査やアンケートなどを実施しているようです。

エンゲージメントとは?

エンゲージメントとは、従業員が仕事に対して強い関与や熱意を持って取り組んでいる状態を指します。

エンゲージメントは、従業員の生産性やモチベーションを高め、企業の業績向上につながるとされています。したがって、企業の成長・存続のために、絶対的必要度の高い、経営上の優先課題とされています。

具体的には、エンゲージメントの高い従業員は、自分たちが所属するチームや組織の理念・方針・ミッション、目標や価値観に共感し、自発的に貢献(自ら考えて行動)することが多く、自分の仕事に対して責任感を持って取り組むことができます。また、エンゲージメントの高い従業員は、フィードバックやコーチングを受け取ることに積極的であり、自己成長(自己啓発、キャリア形成)にも取り組みやすくなるとされています。

企業にとっては、従業員のエンゲージメントを高めることで、従業員の定着率が上がる(離職率が下がる)ことにもつながります。また、従業員がエンゲージメントを持って仕事に取り組むことで、顧客満足度の向上、企業のブランドと価値の向上にもつながります。また、エンゲージメントの高い社員は真摯に仕事に向き合う傾向が強く、コンプライアンス意識も高いので、不正や違法行為などの問題が生じにくいとされています。

忠誠心(ロイヤリティ)との違い

従業員のエンゲージメントと混同されやすいのが「忠誠心(ロイヤリティ)」です。しかし、この2つはいくつかの点で異なります。

まず、忠誠心(ロイヤリティ)は、昭和時代にはよく言われた概念で、従業員が自分の所属する企業に対して、忠誠心や責任感を持ち、長期間(長時間)勤め続けることを意味しています。昭和の時代に話題になった「24時間戦えますか?」という栄養ドリンク剤のテレビCMがその典型です。古い話ですが。

一方、エンゲージメントは、従業員が仕事に対して強い関与や熱意を持って取り組むことを指し、従業員のモチベーションや生産性の向上につながります。そこに、忠誠心のような見えない圧力などはありません。

また、忠誠心(ロイヤリティ)は、定年退職まで企業に滅私奉公することを目的としたものであるのに対し、エンゲージメントは、従業員が仕事に対して積極的な姿勢を持ち、主体的に貢献することを目的としたものです。つまり、エンゲージメントは、従業員が企業に対して忠誠心を持つこと以上の双方向の繋がりを持つものであり、主体的な働き方や成長につながることが重視されます。

さらに、忠誠心(ロイヤリティ)は、企業が従業員に対して提供する福利厚生や安定性、定年退職金などの恩恵に対しての忠誠心が重視される傾向がありますが、エンゲージメントは、従業員が自らの成長やキャリアの発展に対して関心を持ち、その実現に向けた取り組みが求められます。

エンゲージメントの高い組織と、会社に対する忠誠心の高い組織との違い

エンゲージメントの高い組織と会社に対する忠誠心の高い組織を比較すると、いくつかの特徴的な違いがみられます。

まず、エンゲージメントの高い組織は、従業員が仕事に対して積極的な姿勢を持ち、自分の役割や目標に関心を持って取り組む傾向があります。一方、会社に対する忠誠心の高い組織は、企業から押し付けられた目標(ノルマ)に対して忠誠心や責任感を持ち、企業の利益を優先する傾向があります。

次に、エンゲージメントの高い組織は、従業員の自己成長意欲やキャリア形成に関心を持ち、従業員の能力を最大限に発揮するための環境を整えることに注力する傾向があります。一方、会社に対する忠誠心の高い組織は、従業員が企業にとどまることを優先する傾向があり、自己成長やキャリアの発展よりも賃金などの処遇の安定性を求める傾向があります。

また、エンゲージメントの高い組織は、従業員が自己責任や自己管理を重視し、自主性や主体性を発揮する傾向(言われなくても自分で考えてやる)があります。一方、会社に対する忠誠心の高い組織は、従業員が企業のルールや慣習に従い、集団のルールを重んじる傾向(言われたからやる)があります。

忠誠心の高い組織の見極め方

会社に対する忠誠心の高い組織は、従業員が企業に対して忠誠心や責任感を持ち、企業の利益(数字)を優先する傾向がある組織です。従業員は、企業の成功(数値目標の達成)を自分の成功と捉える傾向があります。そのため、会社の利益や存続を優先しすぎるがゆえに、不正な手段で結果を求めることがあります。

また、従業員同士の馴れ合いの連帯感や組織内の伝統や慣習に重きを置くことがあります。したがって、意思決定や変革に対して保守的な傾向が強くなり、周囲の変化に対する対応の柔軟性とスピード感に鈍感になりやすいです。

エンゲージメントの把握

先述のとおり、エンゲージメントは、従業員が仕事に対して積極的な姿勢を持ち、自分の役割や目標に関心を持って取り組む傾向を示すことを指します。では、エンゲージメントはどのように把握するのでしょうか。その方法として、以下のような手法が一般的に用いられます。

◎アンケート調査:従業員に対してアンケートを実施し、仕事に対するモチベーションやストレス、職場環境に対する評価、上司や同僚との関係性などについて質問することで、エンゲージメントを把握することができます。

インタビュー調査:従業員に対して面接形式で質問し、職務や職場環境に関する意見や要望、不満などを聞き出すことで、エンゲージメントを把握することができます。

◎フォーカスグループ:数名の従業員を集めて、特定のテーマについてグループディスカッションを行うことで、従業員の意見や考え方を把握することができます。

◎パフォーマンスレビュー:従業員の業績や成果を評価することで、仕事に対する意欲や取り組み方、貢献度合いを把握することができます。

これらの手法を一つまたは複数用いることで、エンゲージメントを定量的・定性的に把握することができます。また、定期的に調査を実施することで、従業員のエンゲージメントの変化を把握し、必要に応じた改善策を検討することが重要です。

エンゲージメントの把握は、表面的には分かりにくい、従業員の「心の内面」を知る上で、とても重要な役割を持っています。

低いエンゲージメントを向上するヒント

職場でのエンゲージメントが低いと考えられる場合、組織のエンゲージメントを向上するために有効な手段として、例えば、以下のようなものが方法としてあります。

◎コミュニケーションの改善:これまでのコミュニケーションの量と質、手法などを見直し、意見交換やフィードバックの場を工夫することで、従業員の声を反映した改善策を実施することができます。

◎目標設定とフィードバックの強化:明確な目標を設定し、進捗状況のフィードバックを行うことで、従業員が自身の仕事に対して責任感を持ち、やりがいを感じることができます。

スキルアップの支援:従業員がスキルアップする機会やキャリアの方向性を示すことで、自己実現やキャリアアップの目標につながり、仕事に対する意欲を高めることができます。

◎ワークライフバランスの改善:適切な労働時間や休暇の取得促進、ライフに応じた働き方の選択など、働き方の改善を行うことで、従業員がストレスを感じずに仕事に集中できる環境を整えることができます。

◎社員参加型の制度の導入:従業員が企業運営に参加できる制度(新規事業提案、社内起業等)を導入することで、従業員が企業に対してより強い関心を持ち、積極的に貢献することができます。

これらの手段を実施することで、エンゲージメントが低い組織でも、従業員のやる気やモチベーションを高め、生産性向上につながることが期待されます。ただし、従業員の状況や要望に応じて、個別の対応が必要となる場合もあります。

エンゲージメントが低いよくある原因

調査の結果などでエンゲージメントが低いと評価された場合、その原因によく登場するのが「経営者や上司に対する信頼が低い」ことに起因すること。よくある労使の見解の不一致です。

エンゲージメントの重要なポイントを一言で表すと「相互理解と信頼」です。

労使(雇用する側と雇用される側)は、もともと立場が異なります。労働基準法などの労働法令も、労働者を雇用する使用者側に優位性があることを前提として規定化されています。「雇ってあげる」「採用してあげる」という雇う側優位の経営目線がまだまだ日本の雇用慣習の実際。少子化による若年労働人口の減少により、徐々に変わりつつあるようですが、まだまだ経営の本質的なところでは、このような発想が強く根づいています。

"役員の人となり"を見れば、その企業が成長するか、衰退するか、想像できちゃう?

では、信頼度を高めエンゲージメントを向上するには、どのような措置が必要なのでしょうか。

例えば、経営者や上司に対する信頼が低い場合、信頼度を高めるためには以下のような措置が必要と考えられます。

◎透明性の確保:経営者や上司が行う意思決定や行動について、従業員に対して透明性を確保することが重要です。経営方針や企業の目的、方針を明確に示し、情報の公開を行うことで、従業員に対して企業の方針を理解してもらい、信頼関係を築くことができます。

例えば、信頼度の高い企業は、経営方針や経営計画など重要事項について、すべての従業員にきちんと明確に公表し、説明しています。企業規模の大小を問わず、新入社員や有期雇用社員であっても分け隔てなく、経営者自らが自分の言葉で伝えています。対面、オンライン中継など自社に合った方法を工夫して。信頼度の低い企業は、経営者が役員に、役員が管理職に・・と、伝言ゲームのように情報伝達しています。経営者の意図とは理解が異なり、不協和音(経営陣に対する不信感)が広がりやすくなります。

◎コミュニケーションの強化:従業員とのコミュニケーションを強化し、意見交換やフィードバックの場を設けることで、従業員の声を反映した改善策を実施することができます。また、従業員が問題を抱えた場合には、上司や経営者が直接対応し、誠実な姿勢で解決することが必要です。

◎フェアな評価制度の導入:経営者や上司に対する不信感が生じる要因の一つとして、不公平な評価が挙げられます。従業員の評価には客観性や公正性を確保し、成果や努力に基づいた適切な評価を行うことが必要です。評価制度という仕組み(ハード)の問題より、むしろ、評価者の評価の質(ソフト)の悪さが原因がほとんどです。適切な評価訓練を受けず、我流と主観(好き嫌い)での評価結果は、当然のことながら従業員の不平不満(信頼関係の崩壊)を生みます。

◎組織文化の確立:組織文化の確立によって、従業員が共通の価値観を持ち、組織に対する帰属意識を持つことができます。また、従業員が自己実現や成長を実現することができる環境を整えることで、従業員が企業に対して貢献しやすい環境を作ることができます。そのためには、「心理的安全性」を高めることがまず優先されます。

◎報酬体系の見直し:報酬体系の見直しによって、従業員が正当な評価を受け、モチベーションが高まることが期待されます。経営者や上司に対する信頼度を向上させるためには、適正な報酬(頑張った分はきちんと対価を支払うこと)を提供することが重要です。これは、雇用契約の基本を履行するということで、働く側の安心と信頼を得る最も基本的なことです。

コミュニケーションの強化としての「ワン・オン・ワン」

信頼関係構築のために「コミュニケーションの強化」を挙げましたが、これに対し、多くの企業でワン・オン・ワンの制度を取り入れる傾向(ブーム)が続いています。

ワン・オン・ワンとは、個別(1対1)のコミュニケーションを行うことで、従業員と上司との信頼関係やコミュニケーションを改善するために、確かに有効な手段ですが、課題や弊害もあります。

課題と弊害

◎時間の制約:上司や従業員が忙しく、ワン・オン・ワンの時間を取ることができない場合があり、名ばかりの制度として放置されやすい。

◎コミュニケーションの技術:上司がコミュニケーションのスキルに自信がない場合や、コミュニケーションに苦手意識を持っている場合、相互理解と信頼に至らず成果のない形式的な制度になり得る。

◎会話の内容:上司が従業員のニーズや課題について的確なアドバイスをすることができない場合がある。

さらに、ワン・オン・ワンを行うことで、意図しない弊害が生じることもあります。

◎偏見や偏向:上司が特定の従業員とのワン・オン・ワンに力を入れ、他の従業員との会話を怠ることで、偏見や偏向が生じる可能性があります。

◎評価への影響:上司が従業員の評価や昇進についての意見をワン・オン・ワンで聞き、その意見に基づいて評価を決定することがある場合、公正な評価が行われない可能性があります。

◎情報漏洩:ワン・オン・ワンの内容が第三者に漏れることで、組織内の信頼関係が崩れる可能性があります。

これらの課題や弊害を回避するためには、適切な手法やルールを設け、従業員と上司の間でコミュニケーションが公正かつ透明に行われるように努める必要があります。

信頼関係のなさから生じる問題

そもそも、上司と部下の間に信頼関係がない場合、ワン・オン・ワンにおいて以下のような問題点が生じる可能性があります。

◎従業員が話したがらない:上司と部下の間に信頼関係がないと、従業員は自分の本当の気持ちや課題を上司に話すことをためらう場合があります。そのため、ワン・オン・ワンでのコミュニケーションが不十分になり、問題解決しない、または、遅れることがあります。

◎上司が従業員を信じない:上司が部下を信用せず、従業員が報告する問題に対して反応しなかったり、意見を無視することがあるため、従業員は自信をなくしたり、モチベーションが低下したりする可能性があります。心理的安全性の問題です。

◎双方向のコミュニケーションが難しい:ワン・オン・ワンは、双方向のコミュニケーションが前提となっていますが、信頼関係がない場合は、上司からの一方的な指示や要望が多くなり、部下からのフィードバックやアイデアが得られなくなる可能性があります。この場合、部下にとっては上司の話を聞くだけの苦痛な時間(ストレス)となり、上司は言いたいことが言えたという自己満足で、両者のギャップはさらに大きくなります。

これらの問題を解決するためには、まず上司が部下を信頼することが重要です。上司は、部下と対等な立場で接し、どんな些細なことでも部下の意見やアイデアを聞き、尊重することで信頼関係を築くことができます。また、上司と部下の間で目標や期待を明確にし、ワン・オン・ワンの場に限らず、気づいた時にすぐ声がけをするなど、普段からコミュニケーションの機会を増やすことが重要です。

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鍵は、上司と部下との信頼関係の構築

以上のように、すべてにおいて重要なのは「信頼関係の構築」です。

上司と部下が信頼関係を築くためには、例えば、以下のようなことが必要です。

◎目標や期待を共有すること:上司と部下が共通の目標を持ち、その目標を達成するためにどのような役割を担うかを明確にすることが重要です。また、上司が部下に対して期待することを伝え、部下が自分の仕事に対して期待されることを理解することも大切です。

◎対等な立場で接すること:上司と部下の間には、組織上の上下関係がありますが、信頼関係を築くためには、上司が部下を対等な立場で接することが重要です。上司は、部下の意見やアイデアを尊重し、一緒に仕事を進めることで信頼関係を築くことができます。

◎コミュニケーションを増やすこと:日常的な声がけに加えて、定期的にワン・オン・ワンの時間を設けたり、チームミーティングを行ったりすることで、上司と部下の間でコミュニケーションを増やすことが大切です。また、上司が部下に対してフィードバックを行うことで、部下は自分の成長につながる指導を受けることができ、モチベーションが向上することがあります。

◎部下の成長を支援すること:上司が部下の成長を支援することで、部下は自分の力を発揮し、組織の発展に貢献することができます。上司は、部下の能力やスキルに合わせた業務を割り当てたり、キャリアアップのための支援を行ったりすることが重要です。部下の成長に応じた業務を任せることができると、上司自身もキャリアアップを行うことが可能になります。

これらの要素を組み合わせることで、上司と部下の信頼関係を築き、エンゲージメントを高めることができます。

心理的安全性との関係

心理的安全性と上司と部下の信頼関係には密接な関係があります。

心理的安全性とは、チームメンバーが意見やアイデアを自由に出し合い、失敗やミスを恐れずにチャレンジできる環境のことを指します。

上司と部下の信頼関係がある場合、部下は自分の意見やアイデアを自由に言いやすく、上司もそれを尊重することができます。これにより、部下は自分の考え方が受け入れられることを実感し、自信を持って業務に取り組むことができます。

逆に、上司と部下の信頼関係がない場合、部下は自分の意見を言いにくくなり、心理的安全性が低下します。また、上司も部下の意見を聞き入れないことがあり、部下が自由に発言できる環境を作れないことがあります。その結果、部下は自分の意見が評価されないと感じ、業務に対するモチベーションが低下し、エンゲージメントも下がる可能性があります。

つまり、上司と部下の信頼関係があることで、部下は自分の意見を自由に発言でき、心理的安全性が高まります。その結果、部下のモチベーションが向上し、エンゲージメントも高まることが期待できます。

企業におけるエンゲージメント経営の取り組みは、従業員にとって働きやすさと働きがいに直結する問題であり、就職や転職における企業選びにおいても重要な要素であることは間違いありません。

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