FAQ:うつ病等で休職はできますか?

こんにちは、Gene-K(@SmileWork_LAB)です。

今回は、よくある質問「うつ病等で休職はできるのか?」について解説します。

まず、休職できるかできないかは、勤務先の就業規則によります。

働く人の2人に1人(調査では約54%)が"強い不安やストレス"を感じている現代社会において、うつ病などメンタルヘルス不調による精神疾患の患者数は年々増加傾向にあります。

今の時代、メンタルヘルス不調による精神疾患は特別なものではなく、いつでも誰でもがなり得る病気です。

厚生労働省・平成29年 患者調査(傷病分類編)
気分[感情]障害(躁うつ病を含む)の総患者数
平成11年 441千人 → 平成29年 1,276千人
うつ病の総患者数
平成11年 243千人 → 平成29年 424千人
神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害の総患者数
平成11年 424千人 → 平成29年 833千人
総患者数:調査日現在において、継続的に医療を受けている者(調査日には医療施設を受療していない者も含 む。)の数を次の算式により推計したもの。千人単位で表章している。
総患者数 = 入院患者数 + 初診外来患者数+( 再来外来患者数 × 平均診療間隔 × 調整係数(6/7))

また、うつ病などメンタルヘルスの不調により休職や退職を余儀なくされる人も毎年一定数存在します。

ストレスチェック制度が法制化されてはいますが、職場環境の改善は実態として一体どのぐらい進んでいるのでしょうか。

令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況
事業所調査
1 メンタルヘルス対策に関する事項
結果の概要
(1) メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者の状況
過去1年間(令和元年11月1日から令和2年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所の割合は 9.2% [平成30年調査 10.3%]となっている。
個人調査
1 仕事や職業生活における不安やストレスに関する事項
(1) 仕事や職業生活に関するストレス
現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレス(以下「ストレス」という。)となっていると感じる事柄がある労働者の割合は 54.2% [平成30年調査 58.0%]となっている。
ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者について、その内容(主なもの3つ以内)をみると、「仕事の量」が42.5%と最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が 35.0%、「仕事の質」が30.9%となっている。

新型コロナによる在宅勤務・テレワークなど急な働き方の変化や環境の変化などにより、さらにストレスを感じる場面は増えていると考えられます。

大事なことは、うつ病は誰でもなり得る病気だと認識し、なるべく早く専門医による診察を受けることです。

そして、医師の診断に基づきしっかり療養することです。診察の結果、もしうつ病と診断されたら、まず「休職」について検討することをおすすめします。

今回は、うつ病等で「休職」ができるのかどうか、まずその確認方法のポイントについて解説します。

休職に際して確認すること

そもそも勤務先に休職制度があるかないかを確認します。

休職制度は労働法令で義務づけられた制度ではありませんので、制度自体がない会社も存在します。

休職制度がなくても違法にはなりません。

まず勤務先で休職が可能なのか、休職制度の有無を就業規則で確認します。

そもそも休職制度とは?

休職制度とは、業務外の事由(私傷病)により一時的に労務提供ができなくなった場合(働くことができない場合)であっても、これまでの会社に対する貢献度等を考慮し、治療・療養に専念することで将来的に回復(服務)し得るのであれば、就業規則に定める休職期間を与える制度です。

これにより労務提供ができない理由による解雇(就業規則に規定)をその期間猶予します。

休職期間満了までに治癒し就労可能であれば復職を認め、治癒せず就労が不能と判断されれば会社は労働契約を解消(退職)します。

うつ病などメンタルヘルス不調による精神疾患が増えていることから、多くの会社で休職制度の導入が進んでいます。

ちなみに、業務が起因する病気やゲガ等で療養を余儀なくされた場合は、労災保険が適用されます。

療養中の休業補償等については勤務先の就業規則ではなく、労災保険の定めによります。

業務による病気やゲガ等を私傷病として会社が扱う(健康保険や休職制度を使う)ことを「労災隠し」と言い、重大な違法行為です。

この場合は、すみやかに労働基準監督署に相談しましょう。

* うつ病の労災認定は、その立証が困難ではありますが… (この話はまた別に)

勤務先に休職制度がある場合

厚生労働省・モデル就業規則(文末参照)のように就業規則の中に休職について規定している場合と、休職制度規程として別規定で定めているなど会社によって定め方は異なります。

また、厚生労働省・モデル就業規則の休職規定の解説3にありますように、休職自体が労働基準法に定められた制度ではないので、休職の適用基準やその期間、復職に関する基準やその手続き方法などは、会社が独自に定めることができます。

制度がある場合、適用の要件と基準、具体的な手続きの方法などが就業規則等に記載されているはずです。

なお、休職制度があっても対象が正社員のみであって、有期雇用社員や試用社員、定年退職後の再雇用社員等は適用外としている場合も珍しくありますので注意が必要です。

勤務先に休職制度がない場合

休職に関する制度がない場合は、残念ながら休職することができません。

休職制度がない場合、有給休暇を取得し、取得する有給休暇がなくなった場合は、無給欠勤となります。

では、病気が理由で無給欠勤となった場合、厚生労働省・モデル就業規則に記載のとおり解雇となってしまうのでしょうか。

第51条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
4 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき(モデル就業規則より)

就業規則にこのような規定を設けている会社は多いです。

ちょっと小難しい法律的な話ですが、私傷病により労務提供ができなくなった場合の責任は、労働者本人にあります。

労働契約により、労働者は約束どおりにきちんと働く義務(労務提供義務=債務)が生じ、使用者(会社)にはその代償として賃金を支払う義務が生じます。

したがって、労働契約上、私傷病による欠勤(正常に働けないこと)は、労働者側の約束違反(債務不履行)となります(もちろん有給休暇で長期に休むことは問題ありません)。

とはいえ、2、3日程度の無給欠勤で直ちに債務不履行を理由とした解雇ができるわけではありません。

私傷病による欠勤が長期にわたり、誰がどう見ても(客観的に)業務に就くことが困難でやむを得ないことだと認められる場合に解雇が有効と考えられています。

この場合、解雇の理由が約束違反(債務不履行)とはいえ「懲戒解雇」(ペナルティ)ではなく「普通解雇」になります。

この退職・解雇の規定も会社により異なります。

休職とあわせて退職・解雇に関する規定も必ず就業規則で確認しておきましょう。

 就業規則、見たことありますか?

就業規則は、常時10人以上の労働者を雇用している会社であれば必ず作成し、管轄の労働基準監督署に届出なければなりません。

労働基準法
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

また、作成した就業規則は労働基準監督署に届けただけでは効力がなく、労働者への周知が必要です。

周知とは、紙でもデータでオンラインでもその周知方法を問わず、労働者が見たいときにいつでもその内容を見ることができるかどうかです。

周知されていない就業規則は無効になります。

勤務先の就業規則、どうなっていますか? 見たことありますか?いつでも見ることができる状態にありますか?

参考:厚生労働省・モデル就業規則

(休 職)

第9条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

1 業務外の傷病による欠勤が○か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき ○年以内

2 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき 必要な期間

3 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

4 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

【第9条 休職】解説
1 休職とは、業務外での疾病等主に労働者側の個人的事情により相当長期間にわたり就労を期待し得ない場合に、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。なお、本条第1項第2号の「特別な事情」には、公職への 就任や刑事事件で起訴された場合等がそれに当たります。

2 休職期間中に休職事由がなくなった場合は、当然に休職が解除され復職となります。

3 休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません。

(退 職)

第50条 前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。

1 退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して ○日を経過したとき

2 期間を定めて雇用されている場合、その期間を満了したとき

3 第9条に定める休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき

4 死亡したとき

(解 雇)

第51条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
1 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし 得ないとき。

2 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転 換できない等就業に適さないとき。

3 業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けるこ ととなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。)。

4 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。

注意:法改正によりモデル就業規則の内容が変更になる場合があります。

最新のモデル就業規則は厚生労働省の公式サイトで確認できます。

モデル就業規則(厚生労働省)

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