就業規則に定める「副業・兼業禁止」と「懲戒処分」の関係と注意点

こんにちは、Gene-K(@SmileWork_LAB)です。

今回は、積極的に国が促進している「副業・兼業についての注意点」を解説します。

働き方改革の一環として政府は副業・兼業を促進しているのですが、副業・兼業を禁止又は許可制にしている企業はまだまだ珍しくありません。

副業・兼業を一切禁止!にしているところすらあるようですし。

しかしながら、以前のブログ記事「働き方の新常識:政府(国策)による副業・兼業のススメ」で書きましたように、法律(憲法)に定める「職業選択の自由」と「私生活原則自由(所定就業時間を超えて拘束することは人権侵害)」により企業が副業・兼業を禁止することは原則できないのです(公務員は除きます)。

働き方の新常識:政府(国策)による副業・兼業のススメ

副業・兼業を禁止する就業規則は違法?

労働基準法の定めにより、法令を下まわるルールを定めた就業規則は、その部分について無効となり、法に定める基準に置き換わります(就業規則のすべてが無効になるわけではありません)。

ということは、副業・兼業は法律(労働基準法よりも最上位の日本国憲法)の定めにより、そもそも禁止することができないわけですので、客観性合理性なく副業・兼業を禁止と定める就業規則はその部分については「原則無効」となります。

しかし、企業が就業規則で副業・兼業を禁止していても、それだけでは違法とはいえず、労働法令に抵触して罰せられるということはありません。

とはいえです。

政府(厚生労働省)が公表している「副業・兼業の促進のためのガイドライン」では、「副業・兼業を禁止又は一律許可制にしている企業については労働者の希望に応じて副業・兼業を認める方向で検討するように」と進言しています。

企業側の利益最優先により何がなんでも本業以外一切禁止とするのか、従業員にとってのニーズを考慮し多様な働き方を考慮するのかなど経営者がどう反応するか。

従業員のことを思う企業経営か否かの差がここにも表れてきますね(=会社の見方の重要ポイント)。

「副業・兼業は禁止が当たり前!」というわけではないのですが・・・

一般的に企業は、副業・兼業についてのルールを就業規則に定めています。

また、就業規則に定めるルールを守らない場合、懲戒に関する規定より始末書、減給、解雇など何らかの処分を行うことを就業規則(又は付随する懲戒に関する別規程)に定めています。

就業規則に副業・兼業が禁止と定められていても副業・兼業の禁止は法律で無効だから、ルールに従わなくても大丈夫、発覚しても懲戒処分はない・・・というわけにはいかないのです。

政府(厚生労働省)は、副業・兼業の場合には、以下の点に留意する必要があるとしているのです。

副業・兼業の禁止又は制限
副業・兼業に関する裁判例においては、
労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であること
例外的に、労働者の副業・兼業を禁止又は制限することができるとされた場合としては
1 労務提供上の支障がある場合
2 業務上の秘密が漏洩する場合
3 競業により自社の利益が害される場合
4 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合が認められている。

このため、就業規則において、
・ 原則として、労働者は副業・兼業を行うことができること
例外的に、上記1〜4のいずれかに該当する場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと等が考えられる

そうです、例外として上記4つの場合は副業・兼業の禁止・制限が認められているのです。

したがって、一律的に副業・兼業を禁止する就業規則は無効ですが、上記4つの場合は原則として副業・兼業を禁止又は制限する就業規則は有効になり、これに抵触する場合は、就業規則違反として懲戒処分の対象になり得るのです。

ただし、政府(厚生労働省)は懲戒処分に当たらない場合の具体的内容を以下に示しています。

副業・兼業に関する裁判例においては、就業規則において労働者が副業・兼業を行う際に許可等の手続を求め、これへの違反を懲戒事由としている場合において、形式的に就業規則の規定に抵触したとしても、職場秩序に影響せず、使用者に対する労務提供に支障を生ぜしめない程度・態様のものは、禁止違反に当たらないとし、懲戒処分を認めていない。
このため、労働者の副業・兼業が形式的に就業規則の規定に抵触する場合であっても、懲戒処分を行うか否かについては、職場秩序に影響が及んだか否か等の実質的な要素を考慮した上で、あくまでも慎重に判断することが考えられる。

これを読み取る限り、従業員が副業・兼業を勝手に行った場合といえども企業に対して相当の損失・損害が生じない限り懲戒処分はできないとしています。

したがって、副業・兼業を原則禁止又は制限している場合であっても、副業をしている(していた)という事実だけで処分することはできず、もし処分する必要がある場合、上記4つの何に抵触し、どの程度の損失・損害が生じたのかは、企業側が客観的・具体的に立証する必要があるわけです。

副業・兼業について考えられる企業側のルール(就業規則)

政府(厚生労働省)の示す副業・兼業を禁止又は制限することができるとされた4つの内容は、企業にとっても副業・兼業を認める際に想定される大きなリスクでもあります。

したがって、企業が副業・兼業を認める場合に、政府の示す条件の範囲であればを認める「許可制」をルールとしたり、事前に申告や届出さえすれば副業・兼業を可能とする「申告制」や「届出制」などを採用するのが普通であると考えられます。

企業が副業・兼業の実態をまったく把握せずに認めることは現実的に不可能です。

特に、副業・兼業が他に雇用されての場合は、企業に労務管理上の法的責任が問われてしまいますので慎重にならざるを得ません。

もちろん働く側もあらかじめ就業規則で副業・兼業のルールがどうなっているのか、しっかり確認しておく必要があります。

他に雇用されての副業・兼業を行う場合の注意点

副業・兼業を促進する政府(厚生労働省)ですが、これにより長時間労働による健康障害が多発しては元も子もないという危機感を持っており、その対策(労働時間の把握義務)を安全配慮義務責任のひとつとして企業側に管理することを求めています。

この場合の安全配慮(労働時間の把握)とは、本業と副業・兼業先との労働時間を合算して管理することになりますので、それぞれに労働時間を申告するのは副業・兼業をする労働者の責任において行う必要があります。

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は要チェックです!

労働基準法38条1項には「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」という規定があります。

この規定の事業場とは、同じ企業内(同一雇用主)で異なる事業場の通算はもちろん、雇用主が異なる場合の事業場も含まれますので、本業と副業・兼業先との労働時間の合計が総労働時間になります。

この総労働時間が労働基準法に定める法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超過すれば残業代(割増賃金)を支払う必要があります。

この場合の残業代は、雇用契約の締結日が後になった企業(副業・兼業先となります)に支払い義務が生じます。

もちろん副業・兼業先にも36協定や時間外労働の上限規制(時間外労働と休日労働の合計を単月100時間未満、複数月平均80時間以内にしなければならない)も適用されます。

副業・兼業が他に雇用による場合は、企業だけでなく労働者側も、①政府(厚生労働省)の掲げる副業・兼業の禁止・制限が認められる4つ事項、②労働時間に関する事項(働きすぎ)には十分注意が必要です。

少ないリスクで最大限の効果を創出する副業・兼業を探しましょう!

副業・兼業を行う場合、これら他に雇われて働く複雑さとリスクを避けた方法をまず検討してみることから始めるのがよろしいかと思います。

長時間労働で心身を壊してしまい本業の就労が不能になってしまっては本末転倒になってしまいますしね。

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