たとえば、休職制度の休職期間で人を大事にする会社かどうかを考えると…

こんにちは、Gene-K(@SmileWork_LAB)です。

今回は、「休職制度の休職期間で人を大事にする会社かどうか」を考えてみます。

「人こそ財産!」「従業員ファースト!」を口にする経営層(使用者)は多いです。

従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上に繋がると、呪文のように唱えています。

言うことは誰でもできます。すべては実効性。本気か口先だけか、たとえば就業規則や制度など会社と従業員との基本的な約束ごと(契約、ルール)の実効性(目的と中身)で本質を想像することもできます。

休職制度の休職期間

私傷病(業務上の病気やケガ以外)で勤務を休まざるを得なくなった場合、勤め先によっては休職制度を設けている場合があります。

休職制度は労働基準法など法令で義務付けられたものではなく、あくまで任意の制度です。

一般的な就業規則では、私傷病により就労不能の場合は「解雇」できると定めています。

実際、厚生労働省のモデル就業規則の解雇事由には「精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき」と記載されており、この条文の文言そのままを就業規則に記載しているのが一般的です。

厚生労働省のモデルそのままだったら問題にならないだろうということです。

休職制度がある場合、制度で定める休職期間内は恩恵的に解雇を保留とし、休職期間内に復職できなかった場合は退職扱いとする、という流れになります。

もちろん休職制度がないよりあった方が労働者にとって安心して働ける環境であることは間違いありません。

ただし、休職制度があったとしてもその休職期間に注目する必要があります。

まず、合理的な休職期間としてのわかりやすい基準は、健康保険の傷病手当金の受給期間でしょう。

傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されるものです。

その期間は1年6か月とされています。

休職制度のの目的とは?

そもそも、休職制度を設ける目的は何でしょうか?

休職制度の目的は、年次有給休暇では対応できないような長期的な治療・療養に専念し復職を期待するのが本来だと思います。

そして、その目的のとおり本当に従業員のことを考えた制度であれば、従業員自身が被保険者である健康保険の傷病手当金受給期間の期限までは復帰を期待し、その間について解雇を保留すると考えることは、ごく自然なことだと思います。

さらに、厚生労働省のモデル就業規則には「業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。)。」は解雇することがあるともしています。

いわゆる業務上(労災)の場合は、3年という基準を区切りとしています。

病気やケガの原因が業務上か業務外なの分かりにくい場合もあります。

特に精神疾患はその典型です。

そこも踏まえて、最長3年の休職期間を設定しているところもあります。

「使い捨て策」としての休職制度かも?

傷病手当金の受給期間(1年6か月)未満の休職期間の設定は、デメリットの多い解雇を回避してその従業員を退職させる使用者側の都合による制度とも考えられます。

病気やケガになった従業員の使い捨て策です。

解雇を避けたいがために休職制度をつくり、短期間の休職期間を設定し、その期間内で復職できない場合は「退職・自然退職」を適用しようというものです。

休職期間が短ければ短いほど、そう思いますよね。

制度の目的は、使用者として解雇回避の努力はしたけど、本人の健康上の都合でやむなく退職したという事実をつくるためです。

使用者側(会社)も嫌がる解雇

では、なぜ解雇を回避したいのでしょうか?

ご承知のとおり日本の雇用慣行における解雇は、とてもハードルが高い手続きです。

労働契約法でも解雇無効について次のとおりに明らかにしています。

労働契約法(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

実際、過去に以下のような理由により解雇が無効とされた判例がいくつもあります。

就業規則に定める普通解雇事由に該当する事実のある場合でも使用者は常に解雇できるわけではなく、具体的な事情のもとにおいて解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認できないときは、解雇の意思表示は解雇権の濫用であり無効である。

もちろん「解雇するところなんだ… 」と、社会的にも社内的にもすこぶる印象がよくありません。

評判ガタ落ちで、採用活動にも影響を及ぼします。

また、過去に解雇実績がある会社には雇用保険における各種給付金の給付をしないというルールもあります。

解雇とは、使用者(会社)にとってデメリットが大きいのです。

なので、なんとか解雇を避けて自然退職へ持ち込みたいという発想も当然あるのです。

なお、雇用保険において、休職期間満了での退職は、自己都合退職ではなく、期間満了(会社都合)の扱いとなります。

皆さんの勤め先はどうでしょうか?

普段から経営層(使用者)が言ってること(経営方針・理念など)と、実際に行っていること(就業規則や制度なの中身など)に矛盾はありませんか?

制度があるから良い、ということばかりではありません。

大事なのは、その目的と内容です。

道義的、恩恵的(人を大事にする)を装って、その実は、制度を理由に会社の思惑どうりに従業員を追い込むこともあるのです。

すべてにおいて本質を見極めることが重要な時代です。

〜 参考 〜

引用:厚生労働省・モデル就業規則
解雇
第51条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある
1 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。
2 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。
3 業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けるこ ととなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。)
4 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。
5 試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、労働者として不適格であると認められたとき。
6 第66条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。
7 事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。
8 その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。
2 前項の規定により労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告をする。予告しないときは、平均賃金の30日分以上の手当を解雇予告手当として支払う。ただし、予告の日数については、解雇予告手当を支払った日数だけ短縮することができる。
3 前項の規定は、労働基準監督署長の認定を受けて労働者を第65条第1項第4号に定める懲戒解雇にする場合又は次の各号のいずれかに該当する労働者を解雇する場合は適用しない。
1 日々雇い入れられる労働者(ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
2 2か月以内の期間を定めて使用する労働者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
3 試用期間中の労働者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
4 第1項の規定による労働者の解雇に際して労働者から請求のあった場合は、解雇の理由を記載した証明書を交付する。

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