新卒採用における「エントリーシート」は、AIに任せていいものか? 「エントリーシート」は、廃止すべきか?

こんにちは、Gene-K(@SmileWork_LAB)です。

就職活動において、多くの企業では応募に際しエントリーシートの提出を求めます。エントリーシートには、学生の自己PRや志望動機、学生時代に力を入れたことなど、企業がその学生の"人となり"を多面的に評価するために必要(と思われる?)な情報が収集されます。

近ごろ、ChatGPT など生成AIの登場により、エントリーシートのあり方に様々な意見が交わされています。生成AIは、膨大な量のテキストデータから学習しており、人と同じように自然な文章を生成することができます。そのため、就活生はAIを利用すれば、簡単にエントリーシートを作成することが可能になってしまったので…

AIによるエントリーシートの作成は、採用担当者や就活生にとって、どのようなメリットが考えられるのでしょうか。

AIによる採用担当者にとってのメリット

採用担当者は、毎年大量のエントリーシートを読み、その中から採用する学生を選抜する必要があります。エントリーシートの量が増えれば増えるほど、採用担当者の負担は大きくなります。

AIによるエントリーシートの作成は、採用担当者の読む負担を軽減する効果があります。AIは、自動でエントリーシートの形式を整えたり、誤字脱字を修正したりすることができます。その読みやすさで、エントリーシートの中から、採用担当者がチェックしたいポイントを抽出し評価することが容易になります。

AIによる就活生にとってのメリット

就活生にとってのエントリーシートの作成は、時間と労力を要します。特に、就職活動と学業で多忙な就活生にとっては、エントリーシート作成はそれだけで大きな負担となります。

AIを使用することで、エントリーシート作成時間の負担を軽減できます。そして、その効率化できた時間を業界研究、企業研究、会社説明会への参加など、他の活動に充てることができます。

メリットとデメリットを踏まえた考察

AIによるエントリーシートの作成は、採用担当者にも就活生にもメリットをもたらしますが、やはり、デメリットも考えられます。

デメリット1:エントリーシートの精度が低下する可能性

生成AIによる文書の作成は、まだ発展途上にあります。そのため、使い方次第では、エントリーシートの精度が低下する可能性があります。

AIは、学習データに含まれた情報をもとに文章を生成します。そのため、学習データに偏りがあると、AIが生成した文章も偏ったものになる可能性があります。また、AIは、文章の意味を理解して文章を生成するわけではありません。そのため、AIが生成した文章は、誤解を招く可能性もあります。

デメリット2:就活生の主体性が低下する可能性

エントリーシートは、就活生が企業に自分をアピールする重要なツールです。また、エントリーシートは、就活生が自分の考えや経験を整理して文章にまとめる機会です。このプロセスを通して、就活生は、自分の強みや弱み、将来の目標などを明確にすることができます。

しかし、AIによるエントリーシートの作成に依存し過ぎると、就活生は自分の考えや経験を整理して文章にまとめる機会を失ってしまいます。その結果、就活生の主体性が育まれず、企業に自分をアピールする力が身につかない可能性があります。エントリーシートは通過するが、面接が通過しない"面接難民"の増加が懸念されます。

エントリーシートは廃止すべきか?

AIによるエントリーシートは、就活生の本音が分からないので廃止すべきという意見も出てきています。また、エントリシートの作成にAIの使用は禁止すべきだという意見も。

前者の「就活生の本音が分からないので・・」については、ネット上に散乱する合格するエントリーシートの文例、エントリーシートのマニュアル本、キャリアセンターやキャリアカウンセラーによる徹底した指導、添削など、AIよりも以前からエントリーシート対策は進んでおり、すでに、本音のPRよりも、"選考に通過するためのPR"になっています。手書きのエントリーシートからWEBでのエントリーシート(コピペ)へと移行した時点でそれは加速的に。

また、学歴重視の企業や応募が殺到する企業の中には、エントリーシートの記載内容を評価するより"足切りの理由付け"の目的で選考に組み込んでいることもあります。就活生にとって理不尽な話ですが。

「エントリーシートを廃止すべきか・・」については、就活生の主体性を重視するか、採用担当者の負担を軽減するかなど、様々な視点で考える必要があります。それに加えて、自社の求める人材に照らし合わせて慎重に検討する必要があります。さらには、そもそも"何が目的でエントリシートを選考のプロセスに加えているのか、エントリーシートの何を見て評価・判断しているのか"を改めて再定義すべきです。

これからの時代に求めらるスキルとの関係

一方で、少子化による労働力の不足、多様な働き方の促進、新たな価値の創造、生産性の向上のためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)が欠かせません。官民が一体となってDXを推進していますが、企業によって大きな"DX格差"が生じているのが実態です。このDXが進まない企業は、旧態依然としたマンネリ化のアナログ業務に人手不足が追い打ちをかけて、さらなる長時間労働やコスト増加、離職増加のループから抜け出せず、成長が止まってしまうでしょう。

なぜ「ⅮX人材(デジタル人材)」なのか? 政府の政策から読み取る、これからの時代に必要なスキルとキャリア、マインドについて

この企業の成長に必要不可欠なDXの推進には、言うまでもなく"DX人材(デジタル人材)"が必要とされています。DX人材とは、デジタル技術を活用して、業務の効率化や新たな価値の創造に取り組むことができる人材です。DX人材は、IT業界の領域の話で、その他の業種・職種には無縁だと誤解している人もいます。DXは、AIなどを活用して業務変革を行うことです。したがって、IT業界よりも、むしろ他のすべの産業と職種に求めらる業務革新とスキルです。全ての社会人における"リスキリング"の共通テーマでもあります。

経済産業省のポータルサイト「マナビDX Quest」について 〜DXを推進するデジタル人材の必要性〜

このように、これからの時代に必要とされる人材を考えると、エントリーシートの作成にAIを使用することを推奨することは、DX人材の能力を見極める上で、一つの指標になるかもしれません。

AIによるエントリーシートの生成は、効率的に文章を作成できるという点で、DX人材に求められるスキルのひとつである"生産性"を示すことができます。また、AIの活用方法を理解し、自ら活用できるという点では、DX人材に求められるスキルのひとつである"ITリテラシー"を示すこともできます。

ただし、エントリーシートの作成にAIを使用することは、あくまでも一手段に過ぎません。DX人材の能力を見極めるためには、エントリーシート以外の方法も検討する必要があります。

学校の教育方針を尊重する

企業同様、学校におけるAIの活用方針はまちまちで、、AIの使用を推奨しているところもあれば、禁止しているところもあるという実態を考慮することも重要です。

AIの使用を禁止している学校に通う学生が、AIによるエントリーシートの生成を推奨された場合、不公平感や違和感を感じてしまう可能性があります。逆に、AIを推奨している学校に通う学生にAIの使用を禁止する場合、禁止する理由を明確に伝えることが必要になるでしょう。

AIによるエントリーシートの生成を推奨する際には、学校の教育方針を尊重することが重要になります。

AI使用の可否を明示する必要性

エントリーシートに生成AIを使用しても良いか禁止するのか、以下の2点から"予め明示する必要がある"と考えます。

公平性を確保するため

生成AIによる文章作成は、まだ発展途上にあります。そのため、AIによるエントリーシートの生成が必ずしも質の高いものを生成できるとは限りません。

もし、企業がAIによるエントリーシートの生成を推奨しつつ、AIの使用を応募者に明示していなかった場合、AIによるエントリーシートの生成が得意な学生と、AIによるエントリーシートの生成が苦手な学生(学校で禁止されているなども)で、エントリーシートの質に差が生じる可能性があります。その結果、AIによるエントリーシートの生成が得意な学生が不当に有利となり、AIによるエントリーシートの生成が苦手な学生が不当に不利になる可能性があります。

そのため、企業は、AIによるエントリーシートの生成を推奨する際には、AIの使用を予め応募者に明示し公平性を担保することが重要だと考えます。

就職活動に混乱をきたすため

そもそも就職活動時代は、不慣れで不安な学生が多いのが前提として考えると、エントリーシートの作成について、AIは禁止・推奨・不問など、企業によってそのルールにばらつきがあったり、明示がなかったりすると、応募の入り口の時点で混乱をきたす可能性があります。

AIの使用を応募者に明示していなかった場合、AIによるエントリーシートの生成を利用するかどうか就活生が個別の企業ごとに判断をすることが難しく、活動に支障をきたす可能性があります。就活生の立場を尊重するということは企業側の責務だと考えます。

具体的には、採用情報サイト、企業の採用ホームページ、エントリーシートの応募フォームなどに、AIによるエントリーシートの生成の可否を明示するのが適当かと思います。さらに、重要と考えるのは"学校の求人票"への記載の必要です。これにより、学校側は企業ごとのルールを把握し、学生への指導を的確に行うこと、企業の採用活動におけるAI使用の状況を把握(=企業が求めるスキルを把握)し、学校教育に活かしていくことが可能になるでしょう。

となると、公正採用の観点から、ハローワークの求人にも明示することが適当ではないでしょうか。さらに言えば、就活生・企業の双方にとって負担なく、効果的な活動が行える仕組みづくりを構築し、その中に、「ジョブ・カード」を組み込むなど、ハローワークの求人業務(新卒・中途)のDX化を劇的に進めることが必要だと考えます。

キャリア形成(就職・転職)に役立つ『ジョブ・カード制度(厚生労働省)』のメリットを紹介します

以上、考察の中に個人的な見解が多々含まれております。ご承知おきのほどお願いします。

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