フリーランスという働き方の増加で注目される「フリーランス保護新法」とは?

こんにちは、Gene-K(@SmileWork_LAB)です。

労働移動の円滑化 、副業・兼業の拡大など、従来の日本の雇用のあり方を覆すような政府の施策が、これまでにないスピード感で進められています。日本経済を取り巻く危機感に対する差し迫ったものがヒシヒシと感じられますね。今回のフリーランスの課題解決に向けた「フリーランス保護新法」の法制化もそうです。

フリーランスとは?

政府の公表によると、フリーランスの形態で仕事をしている方が日本でも462万人に増えているとのことです。そしてこれは、ネットワーク環境やデジタル技術の進化(DX)により、さらにその機会が増大し、また、政府が積極的に推進する副業・兼業の原則自由化も後押しとなり、今後ますます増え続けるでしょう。

ところで、そもそもフリーランスとは、どのような働き方のことを指すのでしょうか?

一般的にフリーランスとは、企業など組織・団体などに属さずに、個人で仕事を請け負う働き方のことを言います。たとえば、フリーのカメラマンとか、フリーのイラストレーター、フリーのライター、フリーのプログラマーという職種や、配送、建設、建築の仕事など分野などは問いません。

契約形態は、イラストや写真1点あたりいくらとか、依頼された案件の成果に対し報酬を受け取るカタチです。雇用契約による労務提供ではなく成果報酬です。

ひと昔前までは、フリーランスと副業は、本業か否かの違いなどで別物とされてきましたが、今はその垣根はなく、副業をフリーランスで行うことも珍しくありません。

たとえば、Uberのような個人事業者として配送を請け負ったり、税金対策でサイドビジネスを個人事業者として行うこともありますので。むしろ、本業以外に雇われての雇用契約による労務提供型の副業よりも、個人事業としての副業のほうが何かと制約が少なかったりもします。

副業・兼業:その目的・目標によって、どうすべきかが変わってきます

また、インターネットの日常化により、Webや動画などコンテツ系のクリエイティブな仕事や、コンサルティング系の仕事などなど、フリーランスで行える仕事の幅もどんどん広がり、その内容も変化しています。副業のフリーランスから起業するというキャリアも珍しいことではありません。

多発するトラブル防止のために

時間や場所にとらわれることなく、自分のスキルを活かし個人で自由に仕事が行える働き方は、一見すると気楽に思われがちのフリーランス。しかし、そこは、成果主義・実力主義の世界そのものであり、勤め人のように労働基準法などの労働法で守られた働き方ではありません。

むた、フリーランスの増加によりトラブルによる不安の声が増えているのも実態です。たとえば、仕事の契約が短期・単発になりがちなうえに、個人対企業(組織)のチカラ関係で契約上のトラブルが生じたりと…

政府は、2021年に内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の連名で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を公表しています。

厚生労働省通達(基発0326 第12号・雇均発0326第3号・令和3年3月26日)

また、フリーランス・個人事業主の方が、契約上・仕事上のトラブルについて弁護士に無料で相談できる相談窓口「フリーランス・トラブル110番」も設置しています。

フリーランス・トラブル110番

トラブル110番では、大きく次の3つの問題を相談例として挙げています。

あいまいな契約
 報酬がはっきりしない状態で作業をさせられる。口頭でのやりとりばかりで契約書を作ってくれない。
ハラスメント
 暴言・暴力などのパワハラ行為を受ける。断ると仕事を回さない、とセクハラ行為を強要される。
報酬の未払い
 報酬を一方的に減額されたり、理由をつけて払おうとしない。納品後に発注者と連絡が取れない。

これ、フリーランス(個人)の立場の弱みにつけ込んだいじめですね。これでは、起業や副業・兼業を強力に政府が推進しても、ちょっと躊躇してしまいそうですし、活躍の可能性を潰されてしまいそうですよね・・・

実際、なんらかの理由により起業がうまくいかなかった場合のセーフティネットとして、特例として失業保険が受給できるように法改正もありましたし。

起業を後押し?事業開始等による保険受給期間の特例(改正雇用保険保険法)について

現行でも業務委託側が立場の弱い下請け業者(フリーランスを含む)をいじめることのないように定めた「下請法」があります。しかし、その法の適用について、フリーランスは対象外となるケースが多く、残念ながら「あいまいな契約・ハラスメント・報酬の未払い」という政府も認識している3つの問題が解決できていないというのが実際です。

下請法について(公正取引委員会)

政府が推進する「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の中でもこの問題点を解消するために法制化すると強調していました。

そして、さっそくフリーランスの労働環境を整備するために新たな法律の制定へと展開(国会に法案提出)されるに至ったわけです。

従業員を雇わない創業形態であるフリーランスの取引適正化法制の整備

創業の一形態として、従業員を雇わない、フリーランスの形態で仕事をされる方が我が国でも462万人と増加している。他方で、フリーランスは、報酬の支払遅延や一方的な仕事内容の変更といったトラブルを経験する方が増えており、かつ、特定の発注者(依頼者)への依存度が高い傾向にある。フリーランスは、下請代金支払遅延等防止法といった旧来の中小企業法制では対象とならない方が多く、相談体制の充実を図るとともに、取引適正化のための法制度について検討し、早期に国会に提出する。

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画

フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性

フリーランス保護新法の概要は、内閣官房よりパブリックコメントとして「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」という資料で公表されました。

資料:フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性

その内容は以下のとおりです。起業、副業・兼業の際にも知っておくべき大事なルールになりそうですので、しっかりウオッチしておきたいものです。

「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」

方向性

〇 フリーランスの取引を適正化し、個人がフリーランスとして安定的に働くことのできる環境を整備する。

〇 このため、他人を使用する事業者(以下「事業者」という)が、フリーランス(業務委託の相手方である事業者で、他人を使用していない者)に業務を委託する際の遵守事項等を定める。

(1)フリーランスに業務委託を行う事業者の遵守事項

(ア)業務委託の開始・終了に関する義務

 ① 業務委託の際の書面の交付等

 〇 事業者が、フリーランスに対して業務委託を行うときは、以下の事項を記載した書面の交付又は電磁的記録の提供(メール等)をしなければならない。

 <記載事項>・業務委託の内容、報酬額 等

 〇 事業者が、フリーランスと一定期間以上の間継続的に業務委託を行う場合は、上記の記載事項に加え、以下の事項を記載しなければならない。

 <追加記載事項>・業務委託に係る契約の期間、契約の終了事由、契約の中途解除の際の費用 等

 ※ ①については、他人を使用しない事業者が、フリーランスに対して業務委託を行うときも同様とする。

 ② 契約の中途解約・不更新の際の事前予告

 〇 事業者は、フリーランスと一定期間以上の間継続的に業務委託を行う場合に、契約を中途解除するとき又は当該契約の期間満了後にその更新をしないときには、原則として、中途解除日又は契約期間満了日の30日前までに予告しなければならない。

 〇 フリーランスからの求めがあった場合には、事業者は、契約の終了理由を明らかにしなければならない。

(イ)業務委託の募集に関する義務

 ① 募集の際の的確表示

 〇 事業者が、不特定多数の者に対して、業務を受託するフリーランスの募集に関する情報等を提供する場合には、その情報等を正確・最新の内容に保ち、虚偽の表示・誤解を生じさせる表示をしてはならない。

 ② 募集に応じた者への条件明示、募集内容と契約内容が異なる場合の説明義務

 〇 募集に応じて業務を受託しようとするフリーランスに対しては、上記(ア)①に準じた事項を明示しなければならない。

 〇 事業者が、上記により明示した事項と異なる内容で業務委託をする場合には、その旨を説明しなければならない。

(ウ)報酬の支払に関する義務

 〇 事業者は、フリーランスに対し、役務等の提供を受けた日から60日以内に報酬を支払わなければならない。

(エ)フリーランスと取引を行う事業者の禁止行為

 〇 フリーランスとの一定期間以上の間の継続的な業務委託に関し、①から⑤までの行為をしてはならないものとし、⑥及び⑦の行為によって、フリーランスの利益を不当に害してはならない。

 ①フリーランスの責めに帰すべき理由なく受領を拒否すること

 ②フリーランスの責めに帰すべき理由なく報酬を減額すること

 ③フリーランスの責めに帰すべき理由なく返品を行うこと

 ④通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること

 ⑤正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること

 ⑥自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること

 ⑦フリーランスの責めに帰すべき理由なく給付の内容を変更させ、又はやり直させること

(オ)就業環境の整備として事業者が取り組むべき事項

 ①ハラスメント対策

 〇 事業者は、その使用する者等によるハラスメント行為について、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じるもの等とする。

 ② 出産・育児・介護との両立への配慮

 〇 事業者は、フリーランスと一定期間以上の間継続的に業務委託を行う場合に、フリーランスからの申出に応じ、出産・育児・介護と業務の両立との観点から、就業条件に関する交渉・就業条件の内容等について、必要な配慮をするもの等とする。

(2)違反した場合の対応等

 〇 事業者が、上記(1)の遵守事項に違反した場合、行政上の措置として助言、指導、勧告、公表、命令を行うなど、必要な範囲で履行確保措置を設ける。

(3)フリーランスの申告及び国が行う相談対応

 〇 事業者において、上記(1)の遵守事項に違反する事実がある場合には、フリーランスは、その事実を国の行政機関に申告することができる。

 〇 事業者は、上記の申告をしたことを理由として、フリーランスに対して業務委託を解除することその他の不利益な取り扱いをしてはならない。

 〇 国は、この法律に違反する行為に関する相談への対応などフリーランスに係る取引環境の整備のために必要な措置を講じる。

引用:e-GOV パブリック・コメント「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060830508

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