「新しい資本主義」の時代のキャリアと転職、気をつけるべき求人詐欺のこと

こんにちは、Gene-K(@SmileWork_LAB)です。

いたるところで見聞きする「新しい資本主義」という言葉。そう、岸田内閣が日本経済再生のために打ち出したプランのことです。

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023改訂版案 の概要

三位一体の労働市場改革の原理でどうなる?

中でも特に注目されるのが「三位一体の労働市場改革」の原理。

三位一体の労働市場改革

一人一人が自らのキャリアを選択する時代となってきた中、職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自らの意思でリ・スキリングを行い、職務を選択できる制度に移行していくことが重要であり、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、労働者が自らの選択によって労働移動できるようにすることが急務である。内部労働市場が活性化されてこそ、労働市場全体も活性化するのであり、人的資本こそ企業価値向上の鍵である。こうした考え方の下、「リ・スキリングによる能力向上支援」、「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」、「成長分野への労働移動の円滑化」という「三位一体の労働市場改革」を行い、客観性、透明性、公平性が確保される雇用システムへの転換を図ることにより、構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく。また、地方、中小・小規模企業について、三位一体の労働市場改革と並行して、生産性向上を図るとともに、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる。

(経済財政運営と改革の基本方針 2023・加速する新しい資本主義 ~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~ 令和5年6月16日)


この考え方から、企業の責務は"職務ごとに要求されるスキルとそれに見合った賃金を明確にする(職務給・ジョブ型人事賃金制度への移行と同一労働同一賃金の徹底)こと"であり、労働者側に必要なことは"社内・社外で要求されるスキルを自分の意志で取得し、スキルアップと職務に応じた賃金アップを実現する(個人型のリ・スキリング、転職・起業、副業・兼業の促進)こと"になります。

企業には、少子高齢化による人材不足の時代に高いスキルのある優秀な人材を雇用できる環境整備と情報公開(人的資本経営)を求め、それが実現できない企業は人が辞めていき、採用もできず淘汰される(社会に必要のない企業)という構造。これは、労働者にとっても同じ。リ・スキリングで常に学び、労働市場で必要な人材であり続けないと、低い能力とそれ相応の職務給となりえることを政府は示唆しています。したがって、『多様な働き方の推進等を通じ、多様な人材がその能力を最大限いかして働くことで企業の生産性を向上させ、それが更なる賃上げにつながる社会を創る。 』と掲げている構造的賃上げには、これまで以上に格差を生じる可能性を抱えています。

これまでのように一つの企業で一生を過ごすという働き方が、本人のキャリアと処遇だけでなく日本経済にとっても大きな不利益になるという理論を前提に、能力アップと成長分野への転職(もしくは起業)によるキャリアチェンジで賃金アップ等自己実現を図っていくという考え方。政府がこのような方針を打ち出したことは、労働者側は、会社任せ・他人任せのキャリアではなく、"自分のキャリアは自分の責任で考える必要がある"というメッセージとして強く受けとめる必要があります。良い悪いは別として。ほんの数年で、こうも変わるか?というぐらい、大きな方向転換です。

この方向転換の早さが、退職金に関する考え方の変更にまず表されています。厚生労働省のモデル就業規則の退職金に関する規定が、2023年7月に以下のとおり改訂されました。

改訂前

(退職金の支給)
第52条 勤続 年以上の労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、自己都合による退職者で、勤続〇年未満の者には退職金を支給しない。また、第65条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。
2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、その後の再雇用については退職金を支給しない。

厚生労働省・モデル就業規則

改訂後
(退職金の支給)
第54条 労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、第68条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。
2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、その後の再雇用については退職金を支給しない。

厚生労働省・モデル就業規則

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html

違いがお分かりでしょうか?

改訂後は、「ただし、自己都合による退職者で、勤続〇年未満の者には退職金を支給しない。」という条文が、バッサリ削除されています。

多くの企業の退職金制度は、勤続3年未満に転職など自己都合で退職する場合、改訂前のモデル就業規則のように退職金の支給がないのが普通です。また、自己都合の退職の場合は、勤続年数が長くなることで支給率が高くなる制度が一般的です。これが、自由な意思での労働移動の妨げになるという政府の指摘であり、勤続期間という職務や能力とは関係のない処遇格差を問題視した結果での改訂です。

ただし、厚生労働省のモデル就業規則には規制効力はありませんので、この考え方に則って、すぐに退職金制度を変える企業が増えるとは思えません。ただし、近ごろの政府の動きからすると、中途採用比率や男女賃金比率の公表の義務化と同様、人事賃金制度について何らかの公表を義務化する中で、退職金制度についても公表の対象になると容易に想像できます。『客観性、透明性、公平性が確保される雇用システムへの転換を図ることにより、構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく。』と掲げていますし。

新しい資本主義の時代におけるキャリアと転職

これからの時代は、キャリアの選択肢が増えていきます。多いからこそ、自分自身の能力をしっかりと把握することが重要です。自分がどのような能力を持ち、どのようなスキルを身に付けているかをまず把握することが、自分に合ったキャリアを考える第一歩です。

VUCAの時代『自分らしく働く』ために必要な「自己革命能力」

また、転職をするにあたっては、自分自身の強みだけでなく、社会や企業が求める人材・能力も把握しておくことが大切です。社会や企業が求めているスキルや要件に合わせて、自分自身のスキルアップを行い、より転職に有利な立場を作っていく必要があります。

最近では、転職情報サイトや人材紹介会社が多数存在しており、自分に合った求人を探しやすくなってきています。しかし、ただ求人を探すだけではなく、自分自身のスキルアップを意識した転職をすることが必要です。自分自身にとっても、企業にとっても負担をかけないよう、しっかりと準備をして転職に臨むことが大切です。

これからの時代、キャリア形成に関しては個人の自由な選択が重視されることになってきます。政府や企業側によるサポートも重要ですが、最終的に決定権を持っているのは自分自身です。自分自身が納得できるキャリアを目指すことで、より自分らしい生き方を実現していけるはずです。

改めて大事なポイントをまとめてみます。

自分自身の能力を分析する
まずは、自分自身がどのような能力を持っているか、何を得意としているかを把握することが大切です。過去の職務経験や特技・趣味などを振り返り、自分自身のスキルや強みを整理することが必要です。

求人情報を比較検討する
複数の求人情報を比較検討し、自分自身のスキルや希望条件に合った求人を選択することが大切です。転職エージェントや正社員・派遣社員、副業、起業など、いくつかの選択肢を視野に入れ、自分自身に合った働き方を探すことが必要です。

現状と目的を比較し、具体的なキャリアプランを立てる
希望する職種や業界が存在する場合でも、そのまま目的地を目指すことはできません。まずは現状と目的を比較し、その中で自分自身が取り組むべき課題を洗い出す必要があります。課題を具体的に定めたうえで、ステップアップしていくためのキャリアプランを立てることが必要です。

良好な人脈を築く
これからの時代の転職においては、特に良好な人脈を築くことが非常に重要です。SNSや転職イベントなどで人脈を拡大することができれば、求人情報や自分自身の情報を収集することができます。また、従業員による紹介型の採用活動も増えています。人脈を活用して自己アピールする場面も増えるため、積極的に人脈を構築することが重要です。

スキルアップに取り組む
時代の変化に合わせ、自分自身のスキルアップやキャリアアップに取り組むことが大切です。日々の業務でスキルアップするだけでなく、別の職種に挑戦して見聞を広げたり、外部での勉強会やオンライン講座に参加することで自分自身のスキルアップを図ることが必要です。

以上、具体的なポイントを提示しました。これからのキャリア形成・転職にあたり、自分自身の能力を正確に把握し、希望条件に合った働き方を見つけるためのポイントを押さえたうえで、積極的な行動をとることが大切です。

VUCAの時代に転職するなら、これだけは知っておきたい3つのポイント。〜 人生100年時代のキャリアを考える 〜

求人詐欺(ブラック企業)には注意!

近年、人手不足の中で求人が増加していますが、その裏で求人詐欺も増えています。これから先、さらに転職市場が活発になります。求人詐欺も巧妙化していますので、悪質な求人に引っかからないために、以下のポイントに注意することが必要です。

容易に高収入、高待遇の求人情報には注意する
転職先や求人内容に関する情報があまりにも美しい場合、それに疑問を抱く必要があります。特に、高収入、高待遇の求人情報は、見栄えの良い条件を提示しないと人が集まらない場合が多々あります。また、あくまでもモデル賃金であり、実際に入社時に提示される報酬とはズレている可能性があります。細部まで確認し、きちんと納得できる説明がない場合は避けるべき求人です。

年齢制限・性別等がある求人には注意する
年齢制限や性別制限のある求人は、特定の場合を除きできないことになっています。そうしたコンプライアンス意識の欠落している求人は、そもそも人権侵害にも繋がりますし、そうした求人先では法に反する問題に巻き込まれる可能性もあります。

急な面接や企業への訪問、身分証明書の提出には注意する
電話やメールで急かされるように、本人の都合を無視した面接や試験が行われるところには注意が必要です。また、採用選考において身分証明書の提出を求めるところ要注意です。闇バイト同様、個人情報を担保に無理な就職や仕事の依頼などを行う悪質な企業なども存在します。

求人詐欺以上に悪質な、求人を装っての詐欺ビジネスも見受けられます。特に多いのが、SNSやネット上に架空の求人広告を掲載し、応募者データの収集を装って個人情報を不正に入手したり(求人も職場も存在しないのでデータだけ取られて書類選考不合格の通知のみ)、面接と称して、ホテルのロビーや喫茶店などでいつのまにか中に投資や高額な商品の購入を勧められたり。あなたの経歴に興味のある企業があるので、ぜひ一度話を聞いてほしいと、ヘッドハンティングを匂わせ言葉巧みに誘い出し、実際には求人の話はさておき、投資や教材購入などのしつこい勧誘だった、というのはよくある手法です。求人を語っての詐取手口が多数存在するということを頭に入れておきましょう。

以上のように、求人詐欺や求人と称した詐欺ビジネスに引っかからないためには、信頼できる求人サイトやエージェント、ハローワークなどを利用し、正規の求人募集であることを確認することがまずは大切です。

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